創作怪談【ワールドワイド河童怪談-河童に首ったけ-】:夏の怪談をみんなで作ろう!最終夜より

へっぽこ怪談

You Tubeでやった企画【夏の怪談をみんなで作ろう!・第四夜】で出たワードを使い無理くり作った創作怪談です。

語りはに【夏の怪談をみんなで作ろう!・最終夜】て披露されていますので、よければそちらご視聴ください。


ある地方都市から数時間、バスに揺られて行けるある村の話。

そこは今でこそ避暑地として知られるようになった場所で、セミのなく森やきれいな水をたたえた湖の湖畔が名物の場所だが、一昔前には変わったことで知られていた。

それは、カッパを信仰している、ということで、なんでも宙に舞う浴衣を見るとカッパが現れるとして、昭和の初め頃まではお盆の盆踊りの〆には村人みんなが着ている浴衣脱ぎ捨てて、全裸になって踊り狂う奇祭があったといわれている。

この話はそんな村に祖父母の家があったという人物から聞いた話。

彼の家族は毎年夏になるとその家に行っていたというのだが、彼は実はその家に行くのが嫌だった、という。
田舎すぎて嫌だったのか、というとそういうわけではないらしい。
おばあちゃんの家に行くといつも冷えたチューペットを用意してくれていたし、すだれの作る日陰の下で昼寝をするのも好きだった。
兄弟と一緒に湖畔に行って釣りや泳ぎも楽しんだし、森での虫取りも楽しかったという。お父さんの兄弟が読んでいたというマンガも残っていて、河童レボリューションというやつ以外は楽しく読めていたそうだ。

ではなぜ嫌だったのか?と聞くと、彼はあることを語りだした。

ある夏、おばあちゃんの家に行って遊んでいた時に、屋根裏からあるものが落ちてきたのだという。
それは小さな、干からびた生き物の頭ミイラで、幼い彼は錯乱してしまったが、本当に恐ろしいのはそれからだったのだという。

家族たちはそのミイラをカッパ様と呼んで神棚に上げ、崇め奉ったのだという。

彼は家族のその様子が恐ろしく、この村の小学校のプールの近くにあった廃病院に逃げ出したそうだ。

そこには、自称心霊スポット好きの眼鏡の男がいて、怖がる彼を慰めるように色々と変な話を聞かせてくれた。

その話とは、昔カッパのふりをしたハゲ散らかった人がいて、その人と河童が相撲をとって勝った話とか、その賞品がキュウリ1年分だったとか、カッパの中には政権を狙うガッパ派がいて「May the Gappa be with you」を口癖にしているとか、滑稽無糖な話だったが、その話を聞くうちにカッパもそれほど怖いものではないのかもしれない、と思えるようになったという。

だが、それは楽観視しすぎていたようだった。

カッパのミイラを信仰する家族は、自分たちの先祖はカッパで、カッパと人間の間に生まれた特別な存在であるといいだし、彼にも儀式に参加するよう強制してきたのだ。
特に祖父母のカッパへの傾倒がひどく、祖母は自分が元ミスカッパだったといい、祖父も自分がカッパなのだといい出したのだ。

最初の年はそれでもまだマシで、何年か経つうちに祖父母は完全におかしくなり、そこに行くのが本当に嫌になったのだという。
父や母も、都会で暮らしている分には普通なのに、この村に行くとスイッチが入るようにおかしくなるのだという。

その年も、嫌々ながら村に行ったのだが、どうも様子が違っていたという。
というのも、昔見つけたカッパのミイラがボロボロになってしまっていたのだという。
乾燥させただけのミイラを特に追加で防腐処理等もなしでそのまま神棚に上げて祀っていたのもあり、劣化が進んだりネズミにかじられたりしたのだろう、その年の頃には触れば崩れるほどまで傷んでいたという。

それを見て、家族は「これはとりかえなくてはならない」といい出し、結論から言うとミイラは取り替えられた。

そして更に数年後、父母と彼で村を訪れたとき、今の河童のミイラが劣化しているという話になった。
父母と祖父母はああだこうだと話し合い、結論が出たのか彼に向かって「とりかえなくてはならない」と話しかけてきた。

その号令とともに父親が彼を押さえつけ、母と祖母が彼に襲いかかった。
「尻子玉を抜かれる」という言葉があるが、あれは水死体の肛門が大きく開いていることで、なにか大事なものを引き抜かれたに違いない、という連想からでた発想だという。
だが、このときの母と祖母は明らかに尻子玉を抜こうとしてきていたという。
彼も必死で抵抗するので、抜かれそうで抜かれなかったり、抜かれそうになった時にswitchを渡してごまかしたりしたが、とうとう絶体絶命の状態になったとき、突然ある人物が家に踊り込んできて、彼を抑えている父親から逆に尻子玉を抜き去った。

尻子玉を抜かれた父親はたちまちシオシオとなり、ミイラになっていったが、祖父母と母はその様子を見て絶叫し、乱入者に何者か誰何した。

「旅ガッパだ!」
そう叫んだのは、かつて廃病院でいろいろなカッパ話を語った眼鏡の男だった。

「自分たちの繁栄のために孫子を犠牲にするとはカッパの風上にもおけねえ!坊主、お前の兄弟は救ってやれなかったが、お前だけは救ってみせるぜ!」
そう、数年前に「とりかえられた」のは彼の兄弟をミイラにしたものだったのだ…。

眼鏡の男は腰につけた魚籠から精霊馬を取り出した。

その精霊馬を見るや、祖父母と母は絶叫し、悶え苦しんだ。
「カッパの王族は実は死ぬほどきゅうり嫌い。キュウリアレルギーだからな!」
そういいながら、祖父母と母を精霊馬でバシバシ叩くと、祖母と母からは緑色のオーラが抜けて気絶した。

しかし、祖父に取り憑いたカッパはなかなかしぶとく、「落ちぶれても王族の誇りは忘れない!」そう叫んで抵抗した。

眼鏡の男は彼に持ってきた衣装に着替えるようにいい、彼がそれに着替えると、それはなんと貞子のコスプレだった。
理由を問う彼に眼鏡の男は、カッパは自分より呪力が強いものにはへりくだる傾向があり、平成の呪い祟のアイコン的存在である貞子の命令であれば聞くはずだ、と語った。
そこで彼が祖父に語りかけると、驚くほどかんたんにカッパは祖父の体を明け渡し、祖父はカッパのダークサイドから救われたのだという。

「旅ガッパがなんだったのか、なぜあのとき急に我が家がカッパにとりつかれたようになったのか、それはわかりません。ただ、旅カッパが普通のカッパから守ってくれたのは確かなんですよ」

彼はそう話を締めくくった。

だが、数日後彼は失踪する。
私宛に届いた封筒には彼の日記が同封してあり、そこには恐るべきことが記載してあった。
最後にその彼の日記の主要部分を読み上げて、この怪談を〆めようと思う。

8月3日:ある日起きると指の股に水かきができていた
8月9日:頭頂部の毛が抜け、少しくぼんで水が貯まるようになった。なんだこれは
8月18日:肌の色が肌色から緑色になっているように思う。これでは外に出歩くこともできない
8月22日:どこか人のいないところに行きたい。アレクサンドリアかカッパドキアとかはどうだろう?いや、どちらも観光地だから日本人に見つかるか……日本人が今の僕を見たらなんというか、もう嫌でもわかってしまう
8月25日:僕は王族後を引いていたのだろう、キュウリを見るととてつもない恐怖に駆られる
8月31日:カッパッパー


使用ワード

・ワールドワイド河童怪談-河童に首ったけ-
・カッパ
・避暑地
・学校のプール
・森
・アレクサンドリア
・セミ
・湖畔
・チューペット
・カッパを信仰する村
・田舎のばあちゃん家
・河童の頭のミイラ
・カッパドキア
・すだれ
・精霊馬
・河童レボリューション
・心スポ好きな眼鏡の男
・旅ガッパだ!
・河童のふりをするハゲ散らかった人
・尻子玉抜かれそうで抜かれない
・相撲ととる
・河童に相撲で勝つ
・逆に抜く
・商品はきゅうり1年分
・宙を舞う浴衣を見ると河童が出るという言い伝え
・屋根裏から降ってきた河童っぽいミイラ
・魚籠の中から
・尻子玉を抜かれそうになってswitchを渡す
・本当は田舎のじいちゃんの家に行きたくなかった
・旅カッパがフツーガッパから守ってくれた
・じいちゃんがカッパだから毎年行くのが憂鬱
・どんどん自分がカッパ化する:隔世遺伝
・ミイラにされる
・先祖がカッパと人の間に生まれた子で
・ある日起きると指の股に水かきが
・おばあさんは元ミスカッパ
・主人公は河童の王族後を引いていた
・ダークサイドに落ちたじいちゃん河童を孫カッパが救う
・ガッパ派に狙われる
・落ちぶれても、王族の誇りは忘れない
・廃病院
・河童の王族、実は死ぬほどきゅうり嫌い。キュウリアレルギー
・May the Gappa be with you
・屋根裏のミイラは実は息子
・貞子のコスプレ
・お父さんの兄弟


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